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平成23年度「教育情報化」推進フォーラム ICT実績事例発表CEC奨励賞

サイエンスキャンプ2011

サイエンスキャンプ2011は科学技術教育ネットワーク(NEST)の前身団体であるRISE科学教育研究会の活動になります。

開催日

2011年8月9日〜11日(2泊3日)

場 所

高尾の森わくわくビレッジ(東京都八王子市)

 
2005年から埼玉県北本でスタートして以来、毎年実施。2007年から場所を東京都八王子市に移し、高尾わくわくビレッジにて2泊3日で実施。対象年齢は小学4年生以上で毎年30名前後参加。2009年から子どもゆめ基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)助成活動として実施。

目的

教育用レゴマインドストーム(R)RCXやNXTに各種センサーを取り付け、LabVIEWをベースとしたプログラムソフト「ROBOLAB」を用いたプログラミング及びデータロギングの学習を、野外活動や理科実験、工作などと結びつけて行う。

活動1 高尾山登山 光と温度のデータロギング

光センサーと温度センサーを取り付けたRCX装置と地図を持ち、気温の変化を感じた時の時刻と周囲の様子、地図上の地点を記録しながら、グループによって異なるルートで高尾山を登山。教室に戻ってから、データのグラフから登山中に記録した時点と場所、実際の気温を特定させた。ここでは、グループメンバーが自発的に役割分担を行うように促し、収集したデータが示す光や温度の変化と、登山中地図に記録した周囲の様子(環境)との因果関係を考えさせた。
気温変化の感じ方と実際の気温とが一致する場合もあれば、一致しない場合もあり、どちらもその理由を考えさせた。
理由の考察についてはグループ全体の意見として統一するよう議論させ、最後に自分たちのデータの説明と考察を発表させた。

高尾山1号路のグラフ
高尾山6号路のグラフ
ロギング機器
データロギングしながら登山
ロギングデータの解析
解析データの発表

活動2 エネルギーと温室効果実験

火おこし体験を行うことでエネルギーを人力で生み出すことの大変さと、ソーラークッカーを制作してエネルギーを利用することの便利さを実感した。自分たちでおこした火を薪に移しお湯を沸かし、またソーラークッカーでゆで卵を作って両者の食べ比べをした。

火起こし体験
ソーラークッカー
 
温室効果実験では通常の実験通り、ロウソクや木を燃やすと二酸化炭素が発生し石灰水を白濁させる実験を行った後、本当に二酸化炭素には温室効果の性質があるのかを調べるため、空気と二酸化炭素を入れた2種類のペットボトルに温度センサーを入れて、両者の温度変化をロギングした。このことにより、生物燃料を燃やすことによる地球温暖化への影響を考えた。また二酸化炭素を詰めたペットボトルに中に植物を入れ、光合成によって二酸化炭素が減少することを確かめ、植物の環境に対する役割を実感した。
温室効果実験
計測機器の準備
 
温室効果実験グラフ
赤:空気の温度変化
青:CO2の温度変化

活動3 自然エネルギーと燃料電池

クリーンエネルギーとして着目されている自然エネルギーと燃料電池についての実験と工作を行った。
前者では、レゴ(R)社教材を用いた風車とソーラーパネルによって発電した電気をコンデンサに貯め、その電気を利用してモーターを回させ、光センサーで1分間に何回モーターが回転するかをロギングした。チーム単位で自由に発電させたため、自然エネルギーの不安定さが実感できたようだ。
後者では、燃料電池カーを制作し、各チームそれぞれに電解液を水や食塩水、コーヒーやバスクリンなど様々な溶液に変えて走行距離の違いを比較したうえで、走行距離を競うチーム対抗の競技を行った。

風力で発電
計測機器でロギング
 
風力、太陽光発電で蓄電した電力を使ってモーターを回転させ、回転数をロギングし比較を行った。
太陽光発電の結果
 
風力発電の結果

活動4 暗号解読ゲーム

光の点滅を光センサーで読み取り、グラフの波形が示すモールス信号を基に暗号を解読するゲームを行った。子供たちに興味を抱かせ、楽しく真剣に取り組ませるために、時間の経過と共に針が風船に刻々と近づき、制限時間になると風船を割る時限爆弾装置と名付けた機器を用意した。
またデータを取る→モールス信号を読み取る→暗号を解読しキーワードが隠されている複数の場所を特定して取りに行く→キーワードが全て揃うと正解が導き出せる、と作業工程を多くすることによって、グループメンバーが役割分担し協力することの大切さや良さを知ってもった。

暗号発信器
モールス信号を光で発信
光センサーで信号を読み取り
 
暗号解読器でロギング
時限装置
暗号をロギング
 
グラフから暗号を解読
 
暗号を解読すると場所が分かる

活動5 ロールプレイ「トンボ池」

架空の設定によるロールプレイングの活動を行った。「トンボ池」という美しい自然を残す池に水力発電所をつくる計画が持ち上がるという設定。参加生徒たちは電力会社や関連企業、住民などの立場に立って自分の意見を主張し、最終的にどこにどんな施設をつくるかを決めなければならない。これは単なるディベートではなく、自分の立場を主張しつつ合意形成を図る必要がある活動。

まとめ

参加する前の事前学習として、各家庭で1時間おきに温度計を見て一日の気温変化を記録しグラフ化させた。この経験を通じて、ICT機器を利用してデータを取ることの便利さと精密さに気付いたようだ。
 データロギングにおいては、プログラムを組む段階でサンプリング周期や待ち条件を考える必要があるので、どのような条件や手順で実験するかをそれぞれの目的に合わせて考えなければならない。いろいろな条件を試し、試行錯誤する中で最も適した条件を決定することになる。これは、決められた手順で決まった結果が出るという予定調和的な実験では実現できない活動である。
 自然や実験を対象にしたデータロギングでは、数学の関数グラフのように整然とした結果にはならない。グラフから全体の傾向を読み取りその意味を考える、特異なデータポイントがあればその理由を考える、といったことが要求される。
 理科実験とICTを組み合わせることにより、「科学的リテラシー」を育成する有効な教育方法になると考える。
これをグループメンバーが互いに意見を出し合って行うことで、かなり客観性のある考察が実現されたようだ。またグループ内で役割を分担し各自が役割に責任をもって協力することにより、一人で行うよりもはるかに効率の良い活動ができることが実感されたように思われる。
 テントの設営や火おこし、飯盒炊爨、登山などの様々な活動を含め、常にグループ単位で行動をすることによって、初めて出会った者同士でも短い時間の中でお互いを知り合い、協力して物事を行えるようになった。終了後の解散時には別れを惜しんだり、連絡先を交換したりする様子が多く見られた。